銀河瞑想

ちょっと前の日経新聞に出ていましたが、前田常作氏という画家がいます。

今年で79歳だそうです。 彼は曼荼羅をモチーフにした作品を多く描くそうなのですが、曼荼羅との出会い方が面白いです。

富山県出身とのことで、てっきり、立山曼荼羅にインスパイアされたのかと思いましたが、ちがいました。

前田常作 観音マンダラ―南養寺大悲殿天井画

前田常作 観音マンダラ―南養寺大悲殿天井画

彼が曼荼羅と出会うのは1959年のパリ。 A・ジェレンスキーという美術評論家に自分の絵を見せた時に、「あなたの絵にはマンダラがある」と言われたそうで。

現代美術家を自任していた前田氏は、一度はショックを受けたそうですが、次第にジェレンスキーの指摘を受け入れ、彼の言葉を今では「善知識」だと考えているそうです。

で、ジェレンスキーの知識の背景には、ユングがいるとのことです。ユングが患者に自分の世界を描かせたところ、

中心点が構築され、それを中心にしてすべてのものが秩序付けられたり、あるいはさまざまな無秩序なもの・対立しているもの・結合できないものなどが、同心円的に整然と配置される

ようになっていたそうです。

つまり、「偶発性の飼い馴らし」、「世界の縮減」としての宗教の定義ですね。
画家の感性、神経症の世界、宗教が絡み合っています。

ちなみに、前田氏は、安直に曼荼羅の世界にたどり着いたわけではなく、かなり長い時期、絵がかけなくなり、那智の滝にいったり、四国巡礼をしたそうです。

こうして、絵日記を描きながら段々と復帰し、新しい境地に達されたそうです。 まんだら遊苑といい新しい曼荼羅といい、現代美術の感性って凄いですね。

ちなみに「前田常作の世界」はこちら。見られる作品数は少ないですが、動く曼荼羅が見られます。